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労務コンプライアンス

業務内容

労働時間制度再構築

リモート勤務時代を迎えた現代において、現在法律上で認められている変形労働時間制度に照らし、各企業様の実態に最も適した制度の再構築をサポートします。

11か月単位の変形労働時間制 (労働基準法第32条の2)

1か月単位の変形労働時間制

1か月以内の一定の期間を平均して1か月の労働時間が法定労働時間※を超えない範囲において、当該変形労働時間においては、1日および1週間の法定労働時間の規制にかかわらず、これを超えて労働させることができる制度です。
1か月単位の変形労働時間制は、労使協定や就業規則その他これに準ずるものにより導入することができます。

※法定労働時間は、一般の事業場は1日8時開、1週40時間。常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事案を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業が特例措置対象事業場(1週44時間)に該当します。

導入の要件

1か月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定又は就業規則等により、次の(1)~(4)の要件を具体的に定める必要があります。

(1)変形労働時間制を採用する旨の定め
(2)労働日、労働時間の特定
変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めておく必要があります。
各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時聞とする」という定め方ではなく、長さのほか、始業および終業の時刻も具体的に定め、かつ、これを労働者に周知することが必要です。
(3)変形期間の所定労働時間
変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は法定労働時間を超えないこととされているため、変形期間の所定労働時間の合計は、次の式によって計算された範囲内とすることが必要となります。
法定労働時間×変形期間の暦日数(1箇月以内)÷7日(1週間)
これによって計算すると、1箇月の労働時間の総枠は次の表のようになります。
1か月の暦日数 労働時間の総枠 左の表は、小数点2位以下を切り捨ててあります。
括弧内は特例処置対象事業場(週44時間)法定労働時間の総枠になります。
31日 177.1時間(194.8時間)
30日 171.4時間(188.5時間)
29日 165.7時間(182.2時間)
28日 160.0時間(176.0時間)
(4)変形期間の起算日
変形期間の始期を明らかにしておく必要があります。

一旦「特定」された労働時間の変更の可否

変形期間に入った後に使用者が一方的に変更できるかについては、「業務上の必要のある場合は、指定した勤務を変更する」といった包括的変更条項について、無効とされています。変更できる事由を限定し、就業規則等に明記すると共に、変更によって割増賃金支払が発生する場合があり得ることに留意する必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制」に関連する裁判例
【高裁:JR西日本事件】

一旦勤務指定をした後にこれを変更して勤務させたことにつき、従業員らが、変更後の勤務時間が変更前の勤務時間を超過する部分については、1日7時間45分を超え8時間までの部分は労働協約に基づき、8時間を超える部分は労基法に基づき、それぞれ時間外労働として割増賃金支払請求権を有するとして、会社に対し従業員らの同超過部分の時間外労働に対する割増賃金の支払を請求し、主張が認められました。

<ポイント>
労働者の生活に影響を与え不利益を及ぼす恐れがあるから、勤務変更は、業務上のやむを得ない必要がある場合に限定的かつ例外的措置として認められる。使用者が任意に勤務変更と解釈し得るような条項では、同条の要求する「特定」の要件を満たさず無効である。
労基法第32条の2が変形労働時間制における労働時間の「特定」を要求している趣旨に鑑み、一旦特定された労働時間の変更が使用者の恣意によりみだりに変更されることを防止するとともに、労働者にどのような場合に勤務変更が行われるかを了知させるため、変更が許される例外的、限定的事由を具体的に記載し、その場合に限って勤務変更を行う旨定めることを要すると解すべきである。

2フレックスタイム制 (労働基準法第32条の3)

フレックスタイム制

1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことができる制度です。

一般的なフレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けています。
コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんから、全部をフレキシブルタイムとすることもできます。
コアタイムがほとんどでフレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合、始業時刻、終業時刻のうちどちらか一方だけを労働者の決定にゆだねている場合、始業時刻、終業時刻は労働者の決定にゆだねるとしながら、始業から必ず8時間は労働しなければならない旨義務付けている場合等はフレックスタイム制とはみなされないことがありますのでご注意ください。

2 導入の要件

就業規則その他これに準ずるものにおいて始業及び終業の時刻をその労働者の自主的な決定にゆだねる旨を定めてください。

次の事項を労使協定で定めてください。

(1)対象となる労働者の範囲
対象となる労働者の範囲は、各人毎、課毎、グループ毎等様々な範囲が考えられます。例えば「全従業員」でも、「全企画部職員」というように限定しても構いません。
労使で十分話し合い、協定で明確にしてください。
(2)清算期間
情算期間とは、フレックスタイム制の下で労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、清算期間の長さは1か月以内に限ります。賃金の計算期間に合わせて1か月とすることが一般的です。
(3)清算期間における起算日
起算日については、単に「1か月」とせずに毎月1日や16日等のように、どの期間が清算期間なのか明確にする必要があります。
(4)清算期間における総労働時聞
フレックスタイム制において、労働契約上労働者が清算期間内において労働すべき時間として定められている時間のことで、いわゆる清算期間における所定労働時間のことです。
この時間は清算期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は、44時間)以内になるように定めなければなりません。次の条件式をみたす必要があります。
(5)標準となる1日の労働時間

これを定める主たる目的は、年次有給休暇を取得した際にこれを何時間労働したものとして取り扱うのか、明確にしておくためです。時間数を定めれば足ります。
なお、フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、 その日に標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱い、賃金計算を行います。

具体的例として、1か月を清算期間とした場合の総労働時間は次の時間以下にしなければなりません。

  40時間の場合 44時間の場合
31日の場合 177.1時間 194.8時間
30日の場合 171.4時間 188.5時間
29日の場合 165.7時間 182.2時間
28日の場合 160.0時間 176.0時間

なお、労使協定では、清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、例えば1か月160時間というように各清算期間を通じて一律の時間を定める方法のほか、清算期 間における所定労働日を定め、所定労働日1日当たり7時間というような定めをすることもできます。

(6)コアタイム
コアタイムは労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時聞帯です。必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける時は、その時間帯の開始及び終了の時刻を明記しなければなりません。
コアタイムは労使協定で自由に設定ができます。例えば日によってコアタイムの設定を変えても構いませんし、コアタイムを分割することも可能です。ただし、コアタイム(分割した場合は最初のコアタイムの始まりの時刻と、最後のコアタイムの終了の時刻)が標準となる1日の労働時聞と同程度になるような場合は、フレックスタイム制の趣旨に反しますので注意が必要です。
(7)フレキシブルタイム
フレキシブルタイムに制限を設ける場合は、その時間帯の開始及び終了の時刻を定める必要があります。
この場合、フレキシブルタイムの時間帯が極端に短く、例えば30分しかないような制度や、当該フレキシブルタイムの時間帯が30分単位となっていて、その中から 始業時刻または終業時刻を選ぶような制度は、始業及び終業時刻を労働者が自主的に決定しているとはいえず、フレックスタイム制の趣旨に反しますので注意が必要です。

3事業場外のみなし労働時間制 (労働基準法第38条の2)

事業場外労働のみなし労働時間制

労働基準法第38条の2による事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外の業務に従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。

労働者が事業場外で労働し、時間管理者(使用者)がその労働時間を把握できない場合には、原則として所定労働時間労働したものとみなします。
所定労働時間を超えて事業場外で労働することが必要となる場合には「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」又は「労使協定で定めた時間」労働したものとみなします。
事業場外における労働であっても、複数の労働者が事業場外労働を行う場合でその中に労働時間を管理する者がいる場合、事業場外における業務の具体的指示を受けており帰社する場合などは労働時間の管理が可能ですから、みなし労働時間制の適用はありません。

事業場外労働のみなし労働時間の対象となる業務・対象にできない業務

事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です。
次のように事業場外で従事する場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません。

  1. ① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  2. ② 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
  3. ③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。

  1. ① 当該業務が、起居寝食等私生活を営む白宅で行われること。
  2. ② 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合。
  3. ③ 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。

ただし、例えば、労働契約において、午前中の9時から12時までを勤務時間とした上で、労働者が起居寝食等私生活を営む自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、当該措置の下で随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず、事業場外労働に関するみなし労働時間制は適用されません。

「みなし労働」に関連する判例・裁判例
【★最高裁:阪急トラベルサポート事件】

海外旅行の添乗業務に従事していた派遣労働者が、派遣元会社に対して時間外割増賃金請求を行い、派遣元会社は派遣労働者には事業場外みなし労働時間制が適用されると主張するも同制度適用を受けないとされました。一審では、派遣労働者は単独で添乗業務を行っており、会社から貸与された携帯電話を所持していたが随時連絡したり、指示を受けていないこと、また会社に出社することなくツアーに出発し、帰社することなく空港から帰宅することや、アイテナリーおよび最終日程表の記載はおおまかなもので、そこから労働時間を正確に把握することはできないこと等によれば、本件添乗業務は『労働時間を算定し難いとき』に該当するとしたが、高裁は逆の判断をし、最高裁は二審判決を支持しました。

<ポイント>
●本件添乗業務は、旅行日程が会社とツアー参加者との契約内容として、その日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されている。また添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られている。
●会社は、添乗員に対し、マニュアルにより具体的な業務の内容を示し、これらに従った業務を行うことを命じている。ツアーの実施中においても、携帯電話の電源を入れておき、ツアー参加者との間に問題が起こった場合には報告して指示を受けることを求めている。
●会社は、ツアーの終了後に添乗日報によって業務の遂行の状況等詳細かつ正確な報告を求めているが、その報告の内容については、ツアー参加者のアンケートの参照や関係者に問合せをすることによってその正確性が確認することができるものになっていること。

「みなし労働」に関連する判例・裁判例
【地裁:光和商事事件】

営業社員が使用者に対して時間外労働割増賃金請求を行い、使用者は事業場外みなし労働時間制により所定労働時間したものとみなされると主張するも同制度適用を受けないとされました。

<ポイント>
●営業社員については毎日朝礼が行われてから業務が開始となっている
●朝礼の際に、役員から営業方針等報告・指示がある、当日の行動予定表の作成し、当日朝に提出することとなっている
●出先から営業社員から報告を受けた際には、行動予定表の該当欄に線を引いていた
●営業社員全員に対して会社の所有する携帯を持たせていた
●タイムカードにより従業員の出勤・退勤を管理していた

4.裁量労働制
4-1専門業務型裁量労働制 (労働基準法第38条の3)

研究・開発等の高度専門職の労働者については、当該業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があります。
そのため、業務遂行の手段および時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこととなる業務に従事する労働者が対象となります。
また、業務に対しても施行規則で規定されており、全1日の業務全て裁量的労働に従事することが要件で、対象外の他の一般業務を行う場合には適用されない点に特に注意が必要です。

専門業務型裁量労働制の対象業務(法令で定める19業務)

① 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
「新商品若しくは新技術の研究開発」とは、材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善等をいうものであること。
② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として復数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。
「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(ⅰ)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(ii)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(iii)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること。
③ 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
「新聞又は出版の事業」には、新聞、定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれるものであること。なお、新聞又は出版の事業以外の事業で記事の取材又は編集の業務に従事する者、例えば社内報の編集者等は含まれないものであること。
「取材又は編集の業務」とは、記事の内容に関する企画及び立案、記事の取材、原稿の作成、割付け・レイアウト・内容のチェック等の業務をいうものであること。記事の取材に当たって、記者に同行するカメラマンの業務や、単なる校正の業務は含まれないものであること。
「放送番組の制作のための取材の業務」とは、報道番組、ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材、インタビュー等の業務をいうものであること。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれないものであること。
「編集の業務」とは、上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画及び取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうものであり、音量調整、フィルムの作成等技術的編集は含まれないものであること。
④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
「広告」には、商品のパッケージ、ディスプレイ等広く宣伝を目的としたものも含まれるものであること。考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者は含まれないものであること。
⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
「放送番組、映画等の制作」には、ビデオ、レコード、音楽テープ等の制作及び演劇、コンサート、ショー等の興行等が含まれるものであること。
「プロデューサーの業務」とは、制作全般について責任を持ち、企画の決定、対外折衡、スタッフの選定、予算の管理等を総括して行うことをいうものであること。「ディレクターの業務」とは、スタッフを統率し、指揮し、現場の制作作業の統括を行うことをいうものであること。
⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務
いわゆるコピーライターの業務をいうものであること。
「広告、宣伝等」には、商品等の内容、特長等に係る文章伝達の媒体一般が含まれるものであり、また、営利目的か否かを問わず、啓蒙、啓発のための文章も含まれるものであること。
「商品等」とは、単に商行為たる売買の目的物たる物品にとどまるものではなく、動産であるか不動産であるか、また、有体物であるか無体物であるかを問わないものであること。
「内容、特長等」には、キャッチフレーズ(おおむね10文宇前後で読み手を引きつける魅力的な言葉)、ボディコピー(より詳しい商品内容等の説明)、スローガン(企業の考え方や姿勢を分かりやすく表現したもの)等が含まれるものであること。
「文章」については、その長短を問わないものであること。
⑦ 事業運営において情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)を活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務
いわゆるシステムコンサルタントの業務をいうものであること。
「情報処理システム」とは前記②に規定する情報処理システムをいうこと。
「情報処理システムを活用するための問題点の把握」とは、現行の情報処理システム又は業務遂行体制についてヒアリング等を行い、新しい情報処理システムの導入又は現行情報処理システムの改善に関し、情報処理システムを効率的、有効に活用するための方法について問題点の把握を行うことをいうものであること。
「それを活用するための方法に関する考案若しくは助言」とは、情報処理システムの開発に必要な時問、費用等を考慮した上で、新しい情報処理システムの導入や現行の情報処理システムの改善に関しシステムを効率的、有効に活用するための方法を考案し、助言(専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務は含まない。以下同義。)することをいうものであること。
アプリケーションの設計又は開発の業務、データベース設計又は構築の業務は含まれないものであり、当該業務は前記②の業務に含まれること。
⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務
いわゆるインテリアコーディーネーターの業務をいうものであること。
「照明器具、家具等」には、照明器具、家具の他、建具、建装品(ブラインド、びょうぶ、額縁等)、じゅうたん、カーテン等繊維製品等が含まれるものであること。
「配置に関する考案、表現又は助言の業務」とは、顧客の要望を踏まえたインテリアをイメージし、照明器具、家具等の選定又はその具体的な配置を考案した上で、顧客に対してインテリアに関する助言を行う業務、提案書を作成する業務、模型を作製する業務又は家具等の配置の際の立ち会いの業務をいうものであること。
内装等の施工など建設業務、専ら図面や提案書等の清書を行う業務、専ら模型の作製等を行う業務、家具販売店等における一定の時間帯を設定して行う相談業務は含まれないものであること。
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
「ゲーム用ソフトウェア」には、家庭用テレビゲーム用ソフトウェア、液晶表示装置を使用した携帯ゲーム用ソフトウェア、ゲームセンター等に設置される業務用テレビゲーム用ソフトウェア、パーソナルコンピュータゲーム用ソフトウェア等が含まれるものであること。
「創作」には、シナリオ作成(全体構想)、映像制作、音響制作等が含まれるものであること。
専ら他人の具体的指示に基づく裁量権のないプログラミング等を行う者又は創作されたソフトウェアに基づき単にCD-ROM等の製品の製造を行う者は含まれないものであること。
⑩ 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
いわゆる証券アナリストの業務をいうものであること。
「有価証券市場における相場等の動向」とは、株式相場、債券相場の動向のほかこれに影響を与える経済等の動向をいうものであること。
「有価証券の価値等」とは、有価証券に投資することによって将来得られる利益である値上がり益、利子、配当等の経済的価値及び有価証券の価値の基盤となる企業の事業活動をいうものであること。
「分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務」とは、有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務をいうものであること。
ポートフォリオを構築又は管理する業務、一定の時間を設定して行う相談業務、専ら分析のためのデータの入力・整理を行う業務は合まれないものであること
⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
「金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発」とは、金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発をいうものであること。
ここでいう「金融商品」とは、金融派生商品(金や原油などの原資産、株式や債権などの原証券の変化に依存してその値が変化する証券)及び同様の手法を用いた預貯金等をいうものであること。
金融サービスの企画立案又は構築の業務、金融商品の売買の業務、市場動向分析の業務、資産運用の業務、保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務、商品名の変更のみをもって行う金融商品の開発の業務、専らデータの入力・整理を行う業務は含まれないものであること。
⑫ 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
当該業務は、学校教育法に規定する大学の教授、准教授(注)又は講師の業務をいうものであること。
「教授研究」とは、大学の教授、准教授又は講師が学生を教授し、その研究を指導し、研究に従事することをいうものであること。
「主として研究に従事する」とは、業務の中心はあくまで研究の業務であることをいうものであり、具体的には、研究の業務のほかに講義等の授業の業務に従事する場合に、その時間が、1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものについて、そのおおむね5割に満たない程度であることをいうものであること。
なお、大学病院等において行われる診療の業務については、専ら診療行為を行う教授等が従事するものは、教授研究の業務に含まれないものであるが、医学研究を行う教授等がその一環として従事する診療の業務であって、チーム制(複数の医師が共同で診療の業務を担当するため、当該診療の業務について代替要員の確保が容易である体制をいう。)により行われるものは、教授研究の業務として扱って差し支えないこと。
ただし、大学の助手については、専ら人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事する場合には、前記①に該当するものであること。
また、大学の助教(注)は、専ら人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事すると判断できる場合は、前記①の業務として取り扱うこと。この場合において、助教は、教授の業務を行うことができることになっていることから、その時間が1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものの1割程度以下であり、他の時開においては人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事する場合には、専ら人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事するものとして取り扱って差し支えないこと。
(注)学校教育法の一部改正法が平成19年4月1日から施行され、大学の職員について、同法第58条において、助教授に代えて「准教授」を設け、「助教」が新設。
⑬ 公認会計士の業務
「公認会計士の業務」とは、法令に基づいて公認会計士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、公認会計士法(昭和23年法律第103号)第2条第1項に規定する「他人の求めに応じて報酬を得て、財務書類の監査又は証明をする」業務、同条第2項に規定する「公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応じる」業務が、これに該当するものであること。
⑭ 弁護士の業務
「弁護士の業務」とは、法令に基づいて弁護士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、弁護士法(昭和24年法律第205号)第3条第1項に規定する「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他の法律事務」が、これに該当するものであること。
⑮ 建築士の業務
「建築士の業務」とは、法令に基づいて建築士の業務(1級建築士、2級建築士及び木造建築士の業務とされている業務)をいうものであり、例えば、建築士法(昭和25年法律第202号)第3条から第3条の3までに規定する設計又は工事監理がこれに該当するものであること。
例えば他の「建築士」の指示に基づいて専ら製図を行うなど補助的業務を行う者は含まれないものであること。
⑯ 不動産鑑定士の業務
「不動産鑑定士の業務」とは、法令に基づいて不動産鑑定士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)第2条第1項に規定する「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価格に表示する」業務が、これに該当するものであること。
⑰ 弁理士の業務
「弁理士の業務」とは、法令に基づいて弁理士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、弁理士法(平成12年法律第49号)第4条第1項に規定する「特許、実用新案、意匠若しくは 商標又は国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠 又は商標に関する異議申立て又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びに これらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務」がこれに該当するものであること。
⑱ 税理士の業務
「税理士の業務」とは、法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項に規定する税務代理又は税務書類の作成がこれに該当するものであること。
⑲ 中小企業診断士の業務
「中小企業診断士の業務」とは、法令に規定されている中小企業の経営の診断又は助言の業務をいうものであり、例えば、中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省今(昭和38年通商産業省令第123号)第4条第3項に規定する一般診断業務(中小企業者に対して個別に行う診断若しくは助言又はその手段に対して行う診断若しくは助言)等がこれに該当するものであること。
なお、中小企業診断士の資格を有する者であっても、専ら中小企業診断士の業務以外の業務を行う者は含まれないものであること。

導入の要件

過半数労組がある場合にはその労組、無い場合には過半数代表者と、次の書面協定をすること。

  1. ① 労使協定によって法令等で定める、19業務の中から対象業務および従事労働者の範囲を定めること
  2. ② 当該業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこととする旨を定めること
  3. ③ 1日当たりのみなし時間を定めること ※法定労働時間内(1日8時間)としても、それを超える時間(1日10時間)としても差支えない
  4. ④ 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容を定めること
    健康・福祉確保措置の例・・・
    特別休暇の付与、健康診断の実施、有給休暇についてまとまった日数連続取得を促進、産業医による保健指導
    この健康・福祉確保措置を講ずるにあたって勤務状況をどのように把握するのかについては、出退勤時刻または入退室時刻の記録により行うことが望ましいとされており、安全配慮義務の使用者責任の観点から、勤務状況および健康状態によっては対象者に対して適用の見直しを行うことが望ましいことに留意することが必要です。
  5. ⑤ 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容を定めること
    苦情の申出窓口および担当者・苦情の範囲・処理の手順を明らかにすることが望ましいとされています。苦情の申出窓口については、使用者や人事担当者以外とする等、対象者が苦情を申し出やすい仕組みとすることや、苦情の範囲については対象者に適用される評価制度や賃金制度等処遇全般の事項について含むことが望ましいとされています。
  6. ⑥ 労使協定の有効期間を定めること(不適切な運用防止のため3年以内とすることが望ましい)
  7. ⑦ 対象労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置の状況、苦情処理措置の状況を労使協定の有効期間中と有効期間満了後3年間保管すること
  8. ⑧ 労使協定を所轄労働基準監督署へ届出ること

安全配慮義務の立場から、使用者の労務管理責任を認める裁判例・判例
【高裁:電通事件】

「Aの長時間労働が控訴人の強制によるものではないとしても、控訴人が右長時間労働を許容ないし黙認していた以上、控訴人に責任が生じないことにならないのはいうまでもない」

【最高裁:電通事件】

「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務の内容に従って、その権利を行使すべきである」

4.裁量労働制
4-2企画業務型裁量労働制 (労働基準法第38条の4)

適用するには、まず「対象事業場」「対象となる業務」「対象労働者」の意味するところを確実に理解する必要があります。
また、導入後においても定期的な労基署への報告義務がありますので、組織の体制を整えることも必要となってきます。

1. 対象事業場

事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」が行われる事業場です。
「事業の運営に関する事項」とは「指針」で示されています。

  1. ① 対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼす事項
  2. ② 当該事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画であり、これらが行われる事業場
    1. イ.本社・本店である事業場
    2. ロ.当該企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
      ・主要な製品・サービス等についての事業計画の決定等を行っている事業本部
      ・本社・本店の具体的な指示を受けることなく独自に、企業等が取り扱う主要な製品・サービス等についての事業計画の決定を行っている工場
    3. ハ.本社・本店の具体的指示を受けることなく独自に、支社・支店等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている事業場
      ・本社・本店の具体的な指示を受ける事なく独自に、当該支社・支店等のみに係る事業活動の対象となる地域における生産、販売等についての事業計画や営業計画の決定等を行っている事業場
      ・本社・本店の具体的な指示を受ける事なく独自に、当該支社・支店等を含む複数の支社・支店等に係る事業活動の対象となる地域における生産、販売等についての事業計画や営業計画の決定等を行っている事業場

工場等で個別の製造等作業、作業の工程管理のみを行っている場合、本社・本店、支社・支店等の具体的指示を受けての個別の営業活動のみを行っている事業場は該当しないこととなります。

2. 対象となる業務

以下の4要件全てを充足する業務が該当します。

  1. ① 事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼす事項または当該事業に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画についての業務であること。
  2. ② 企画、立案、調査および分析の業務であること
    業務とは、部署が所管する業務ではなく、個々の労働者が使用者に遂行を命じられた業務をいいます。
    ・企画+立案、調査+分析、さらに企画、提言といった多様な業務パターンが予想される業務をいいます。
  3. ③ 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると客観的に判断される業務であること
  4. ④ 企画・立案・調査・分析という相互に関連し合う作業を、いつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務であること

【対象とならない業務】
・日常的に使用者の具体的な指示の下に行われる業務
・あらかじめ使用者が業務の遂行方法等を示しており、詳細な手順に即して遂行することを指示されている業務

3. 対象となる労働者

対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者である必要があります。

  • ・対象労働者となり得る者の範囲を特定するために必要な職務経験年数、職能資格等の具体的な基準を明らかにする
  • ・知識、経験等を有しない労働者を含めて決議したとしても、労働時間のみなしの効果は生じないことに留意する
  • ・少なくとも3年~5年程度の職務経験を経た労働者について判断する

4. 労使委員会

導入要件を満たすものであることが必要です。

  1. ① 事業場ごとに設置すること
    ・導入事業場が複数あるときは、36協定の場合と同様に各事業場ごとになります。
  2. ② 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とする委員会であること。
  3. ③ 使用者および当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものであること
    ・労使委員会の委員であること、委員になろうとしたことまたは委員としての正当な行為をしたことを理由とした不利益な取扱いをしないこと
  4. ④ 議事録が作成され、かつ保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること
  5. ⑤ 労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要は事項に関する規程が定められていること
    ・規程の作成、変更について使用者は、労使委員会の同意を得なければならないこととされています。

5. 労使委員会の決議事項

所轄労働基準監督署へ届け出なければ、効果が生じません。委員会がその委員の5分の4以上の多数の議決により決議すべき事項が規定されています。

  1. ① 対象業務 企画、立案等を担当する経営企画、人事・労務、財務・経理、広報、営業企画、生産計画担当者等
  2. ② 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者の範囲
    ・少なくとも大学卒業後3~5年程度の職務経験者以上の者
  3. ③ みなし労働時間の設定
    ・「所定労働時間」、通常法定時間外労働となるのが一般的状況であれば「法定の時間外労働時間」を設定します。
    ・「法定の時間外労働時間」と設定するのであれば、36協定の届出、毎月同じ時間の時間外労働のみなし時間として毎月一定の金額の時間外労働割増手当(裁量労働手当等)を支給することが妥当です。
    ・評価制度、賃金制度との関係性にも留意が必要です。
  4. ④ 健康および福祉を確保するための措置
    ・決議で定めることにより使用者が講ずること・・・在社時間の把握、それに基づく健康対策、安全配慮措置・相談・健康診断・休暇付与等を定めます。
  5. ⑤ 苦情の処理に関する措置
    ・決議で定めることにより使用者が講ずること・・・苦情の申出窓口、担当者、処理手続、方法等を定めます。
  6. ⑥ 不利益取扱いの禁止
    ・労働者を対象業務に就かせたときは、その時間労働したとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないことおよび当該同意をしなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
    ・対象労働者の同意は、書面で労働者ごとに有効期間ごとに得ることおよび不同意者への不利益取扱い禁止と配置・処遇・同意撤回の手続等を定めます。
    ・対象労働者の同意とは、みなし労働となる裁量労働に就かせることについてであり、今月は同意する今日は同意しないというものではなく、包括的同意を意味します。
    ・対象労働者の同意について、有効期間ごとに同意を得るべきかについては異議のない者については自動更新も決議事項で定めます。
    ・対象労働者の同意の撤回について、決議事項により手続きを具体的に定めることが適当であるという指針からも、有効期間中は認めない定めも有効といえます。
  7. ⑦ 厚生労働者省令で定める事項
    ・有効期間(3年以内の期間が望ましい)、各種の措置の記録・同意書面の3年間の保存、決議変更の調査審議手続等を定めます。

6. 定期報告の制度

6か月以内に1回およびその後1年以内ごとに1回所定の様式により所轄労働基準監督署へ報告します。

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